28日の平和島9Rのリプレイを見てもらいたい。6号艇の西田靖が強烈なピット離れからインを奪取する勢い。1号艇の野長瀬が意地でインを主張したが、野長瀬、西田の内2艇は100m起こしの深い進入となった。
レースは3コースの北川潤二がまくって1着。西田はごちゃついた1マークのブイ際を小差しで3着に入り、1万6000円台の好配当を演出した。
昭和57年デビューの個性派。若手時代はセンターからのダッシュ戦で大暴れしたが、その後、艇界屈指のイン屋に転向。持ちペラ制(かつては自分でプロペラを持ち込んでいた)時代は、「スーパーピット離れ」という、強力なピット離れを発揮するプロペラを開発。旋風を巻き起こした。
持ちペラ制が廃止された現在は、往年のピット離れこそないが、この日のレースのように、他艇を置き去りにするペラ調整の手腕はいまだ健在。問答無用でイン水域を奪い、自分のレーススタイルを貫いている。
同じインが仕事場の個性派として、同じ昭和デビューの西島義則、鈴木幸夫、江口晃生らが、今もにらみをきかせている。平成デビュー組でも、深川真二、石川真二らが徹底的にインにこだわる個性派として、第一線で活躍している。
逆に6コース専科の阿波勝哉、小川晃司もそうだが、今では数少なくなった個性派は、単調になりがちなレースを面白くする貴重な存在。その分、レースも荒れることが多い。バチバチだった昭和の競艇を今だに演出する個性派たちこそ、艇界の「名脇役」と言えるだろう。彼ら個性派が水面で大暴れするシーンに、競艇の魅力が詰まっている。
香月